※この記事は2021年1月28日時点の情報です。
昨年2020年12月09日に、CentOS8が2021年でサポートを終了するというアナウンスがされ、
我々IT業界に大きな衝撃が走りました。
サポート終了がアナウンスされた公式サイトブログ
https://blog.centos.org/2020/12/future-is-centos-stream/
これまでCentOS8を採用していた現場では、今後バグフィックスやセキュリティ修正などが
リリースされないCentOS8を使い続けることは、まずNGなので当然移行を検討することになります。
同プロジェクトはCentOS Streamへの移行を勧めています。以下手順で移行が簡単にできるとのこと。
Converting from CentOS Linux to CentOS Stream
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root@centos-linux# dnf install centos-release-stream root@centos-linux# dnf swap centos-{linux,stream}-repos root@centos-linux# dnf distro-sync root@centos-stream# cat /etc/centos-release CentOS Stream release 8 |
CentOS Streamが登場する前のRHEL系の位置づけをざっくり説明すると、最先端の機能が試せるけどバグも多いアップストリームの位置づけがFedora、そこから安定したものがRHELとして商用リリースされてそのソースからCentOSがコンパイルされてリリースさます。
それを踏まえて、CentOSを商用本番OSとして採用してきた理由は、無料、オープンソース、メジャーということはもちろんですが、最も大きな理由はRHELのリビルドだったからという企業も多いと思います。
CentOS Stream8への移行において、真っ先に気になる点は、
アップストリームで安定性は大丈夫なのか?です。
衝撃から約2か月経過した今、新たな移行先候補プロジェクトも出現してきましたので、公式の言うとおりにCentOS Stream8に移行することの影響や、他の選択肢についてケース別で考えてみました。
今回移行先の選択肢はdebian系やslackware系などは除外し、RedHat系に絞って検討します。
目次
CentOS8から移行先候補のEOL一覧
OS | リリース開始日 | サポート終了日 | URL | 運営主体 |
---|---|---|---|---|
Red Hat Enterprise Linux 8 | 2019-05-07 | 2029-5-31 | https://www.redhat.com/ja/enterprise-linux-8 | Red Hat, Inc. |
CentOS Stream 8 | 2019-09-24 | 2024-5-31 | https://www.centos.org/centos-stream/ | The CentOS Project/Red Hat, Inc. |
Oracle Linux 8 | 2019-7 | 2029-07 | https://www.oracle.com/jp/linux/ | Oracle |
CentOS 7 | 2014-06-09 | 2024-6-30 | https://www.centos.org/download/ | The CentOS Project/Red Hat, Inc. |
RockyLinux | 2021-3-31(RC版) | TBA | https://rockylinux.org/ja/ | The Rocky Linux Project. |
AlmaLinux | 2021Q1 | 2029年までのサポートをコミット | https://www.almalinux.org/ | CloudLinux Inc. |
CentOS8移行先候補別の特徴
Red Hat Enterprise Linux 8
商用サポートを受けられて、相応のコストを払っていい場合の正攻法の選択肢です。
料金は、オンプレの場合ざっくりStandardプランで約10万/年間。
今回の波紋の張本人ですが、批判的な反応を受けてか、RedHat.Incは、開発者に対してRHELライセンスの緩和策をアナウンスしました。
お客さんがRHELのサブスクリプシヨンを保有している場合には、開発チームで無料でRHELの開発環境を使うことができるようになるとのことです。
また、これまで個人では開発用途で1台無料利用できてましたが、この度、16システムまで本番用途でも利用可能になりました。
No-cost RHEL for customer development teams
We recognized a challenge of the developer program was limiting it to an individual developer. We’re now expanding the Red Hat Developer program to make it easier for a customer’s development teams to join the program and take advantage of its benefits. These development teams can now be added to this program at no additional cost via the customer’s existing subscription, helping to make RHEL more accessible as a development platform for the entire organization. Through this program, RHEL can also be deployed via Red Hat Cloud Access and is accessible on major public clouds including AWS, Google Cloud Platform and Microsoft Azure at no additional costs except for the usual hosting fees charged by your cloud provider of choice.
これは、商用でRHELを選択した場合に、開発現場ではコスト面でこれまで以上の恩恵が得られることになるため、ありがたいニュースです。
CentOS Stream8
CentOS Stream 8はFedoraとRHELほど機能や期間が離れていない中間的なアップストリームなので、Fedoraよりは安定していてRHELに近い存在です。
CentOS7以前には、CentOS Streamというものはなく、2019年9月24日にCentOS8とセットで開始したプラットフォームとなります。
デメリットとしては、アップストリームの性質上、バグを含んだ新機能がRHELよりも先にリリースされるため、安定性に懸念が残る点です。
CentOS Upstreamのユーザーが増えて、RHELがリリースされる前に報告&修正されるバグが増えれば、RHELの安定性は向上するということになりますね。
メリットは、CentOS Project公式でのお墨付き移行先である点です。関係者に移行として推薦する際の説得力となります。また、バグフィックスも早めにリリースされる事になる点もメリットです。
アップストリームの性質上、RHELで発見されたバグがRHELよりも早めにリリースされることになります。
いづれにせよ、CentOS Stream8の利用者数がCentOS8のときと比べて激減して他選択肢に流れると、
バグ報告のスピードやオープンなナレッジも減ってしまうので、安定性も下がってしまうことに繋がってしまうでしょう。2021年末まではCentOS8のサポートが続くので、現状すぐ本番環境を移行するのは様子見とするのが良いかと思います。
Oracle Linux 8
CentOS8同様、RHELのリビルドです。2つのカーネル(Red Hat Compatible Kernel)とUnbreakable Enterprise Kernelを配布していて、(Red Hat Compatible Kernel)のほうはRHELで配布しているカーネルと同一とOracleは言ってます。
以降で紹介するRockyやAlmaと対比してメリットを考えると、既にリリースされてある程度時間経過しているOSであり、EOLが2029年7月まで発表されているところが強みかと思います。
また、RHELよりも比較的安価な有償サポートもあるということで、比較表上で考えると移行先の最有力候補になりそうですが、VPSホスティングプロバイダーやクラウドベンダー、インフラ構築も請け負っている同業他社で、これまでOracleLinuxを使ってますという話を聞いたことがなかったり、推薦している例を見たことがないのもあり、ひっかかるところもあります。
CentOS 7
CentOS8は打ち切りになってもCentOS 7はこれまでどおり2024/6/30までサポートが続くので、
既にCentOS7を利用して本番運用しているところは、そのまま様子見がよいかと。
CentOS7へのダウングレード方法は公式アナウンスされてないようで、
手間という面ではいちばんかかるかと。再インストールとサーバー/アプリケーションの再構築が必要になりますね。
私はこの選択肢は選びませんし、お勧めしません。
AlmaLinux
ホスティングサービスプロバイダー向けに商用有償OSCloudLinux OSを提供している
CloudLinux社が立ち上げた新しいRHELクローンプロジェクト
https://almalinux.org/
- コミュニティとのパートナーシップで進める
- RHEL8からのフォークで、バイナリレベルでの1対1互換
- 永久に、常に無料、常にオープンソース
を公式サイトで宣言しています。
彼らの製品のCloudLinuxOS自体がRHELからのフォークによる製品なので、RHELクローンをリビルドして提供し続けるノウハウを持っている同じチームがメンテナンスていきますよ、という点が強みですね。
また、「Backed by $1M annual investment」と書いてある通り、年間100万ドル投資すると書いてあります。
ので、プロジェクトの資本面での継続性も盤石ですよというのがアピールポイントになるかと思います。
逆に、RHELをリビルドして提供するというコミュニティ運営に年間そんなにコストかかるんだ、というところも勉強になります。
ビジネス視点で考えると、AlmaLinuxがRHELリビルドのデファクトになり知名度が高まると
CloudLinuxOSの知名度向上やブランディングにも繋がるってことなんでしょうかね。
オープンで中立的なものを選択したい、といった場合には、CentOS Stream8やOracle Linux8よりは
オープンな立場にもみえますが、やはり主体がCloudLinuxという1社主体の体制という点は、
今回のCentOS 8事件同様、今後簡単に方針を覆す可能性を気にせざるを得ない、と私は思います。
RockyLinux
今回の件をうけて、CentOSプロジェクトの創設者のGregory Kurtzer(グレゴリー・クルツァー)氏が率いて立ち上げられた、新しいRHELクローンプロジェクト。
https://rockylinux.org/ja/
特徴は、公式ページにも書いてある通り、
- バグをも含めて 100% の互換性を持つように設計されたコミュニティ商用OS
- このオペレーティングシステムはコミュニティ主導で開発されています
というところです。
実質RedHad主導だったCentOSが突然方針変えて混乱が生じている点、
OracleLinuxやAlmaLinuxなど他の選択肢も企業主導である点を考慮して、
このRockyLinuxは、自社製品に最適化したカーネルを入れたり、突然EOL等方針を変えたりしないよ、ということを臭わせてアピールしています。
さらに、注目すべき点はスポンサー企業で、現時点で3社だけですが、どれも注目すべき会社がスポンサーになってます。
1社目、Ctrl IQ社は、ウェブサイトを訪問しても事業内容他全て不明ですが、Gregory Kurtzerさんの会社です。
2社目、Mattermostは、slackのクローンとして有名なOSSプロジェクト。rockyプロジェクトのslackチャネルも2月で閉鎖して、全てmattermostに切替えますと宣言されてます。
そういえば本件同時期にslackがsalesforceに買収されることが発表されてましたね。
3社目、スポンサーにAWSがなっている点。
The team selected AWS as the primary build platform for development of Rocky Linux. AWS was chosen primarily to protect the integrity of the software supply chain for Rocky Linux.
チームは、Rocky Linuxの開発のための主要なビルドプラットフォームとしてAWSを選択した。AWSは、主にRocky Linuxのソフトウェアサプライチェーンの整合性を守るために選ばれました。
とフォーラムに記載されており、今後CentOSの後継のAMIが提供されていくであろうことを想像させます。
またAWSがスポンサーしてビルドインフラ提供していることから、AmazonLinux3はきっとRockyLinuxベースになるんだろうなと思わざるを得ません。
AWSでの運用が多い場合は特にRockyLinuxを注目です。
リポジトリはこちら
https://github.com/rocky-linux
「we will never permit ourselves to be controlled by any single entity」
と書いてある点も、今後も中立性を保つところにアイデンティティーを持っている点が窺えます。
まとめ
RHEL互換をうたっている移行先をいくつかご紹介しましたが、
高い互換性の担保とコミュニティ主導によるこだわりという点や、
クラウドでメジャーな立場のAWS利用を考えると、RockyLinuxが最有力候補になるのかなと思いました。
2021年5月31日時点では、AlmaLinuxが安定版をリリースしており、AWS Marketplaceに公式AMIが公開されている一方、RockyLinuxは、まだRC1(ベータ版)のみであり、AWSに公式AMIも公開されていない点から、現時点ではAlmaLinuxが最有力選択肢となりました。
ただ、どれも高いRHEL持っているなら、OracleLinux↔AlmaLinux↔RockyLinux互換も
それこそちょっとリポジトリを変更するだけで、簡単に実現できるんじゃないかと楽天的に考えました。
また、RHELでは
1 |
dnf upgrade --security |
でセキュリティ修正があるパッケージのみをアップグレードできたけど、
CentOS8ではセキュリティ用のメタデータがないから使えない、といった違いがあった部分も、
新しいクローンではそこまで互換性があると運用上ありがたいなと思いました。
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