RFPの発注者とベンダー、両方の立場を並行で仕事してみて思うこと

普段は自社サービスのセールスをやりながら、
クライアントのプロジェクトのPMOもやらせていただいております。

今回はRFP関連でレアなシチュエーションで仕事していることもあり、そこでの気づきをまとめてみました。
気づきの内容は、テクニカルなことではなく、発注者、ベンダー双方がRFPに対してどういったスタンスで取り組むべきか、準備すべきかを中心にまとめさせていただきました。

今後の私自身の備忘録として、また皆さんの業務の一助となれば幸いです。

 

はじめに

まずは、2つのプロジェクトの現状の私の立ち位置を説明します。

■Project:X
・クライアントAのPMOとして新規PJに参画
・新規サービス開発のために、RFPを作成しベンダー選定中
・ベンダー選定先の1つが当社

■Project:Y
・クライアントBの既存システムのリプレイスとして弊社サービスを候補先の1つとして検討
・RFPを受け、弊社サービスの代理店がフロントに立ち、代理店の下でサービスを提案中

プロジェクトXは発注者側の立場として、
プロジェクトYはベンダー側の立場として活動しています。

RFPの発注者側とベンダー側両方とも何度も経験したことはありますが、
別々の案件でそれぞれの立場で並行して対応することは初めてです。

今回は同時並行で進めることで、最終的に良いプロジェクトにするにあたり、
双方が取り組むべきことやスタンスについて気づいたことをつらつらとまとめました。
(きれいごとも含めます)

※RFP(提案依頼書)とは、企業がシステムの構築やリプレイスを行う際に、具体的な要求事項を記した資料になります。
RFPの基本的な知識部分は、ここでは詳細は割愛します。

 

RFPで意識すべき11のこと

その①:同評価の場合の発注者側の意思決定ルールを事前に明確にしておくこと

「数値上はどの会社もほぼ同じ点数です。どうしましょうか。」

発注担当者が社内のミーティングにて、RFP候補先のベンダーからの情報をもらい採点結果をフィードバックした際の一言です。

複数のベンダーを評価する際、明らかに点数で差異が出る場合もあれば、同評価になってしまうケースもあります。

同評価の場合、どのように評価をするか、出来る限り事前に決めておく必要があります。
多くの場合、最終的な決定基準は機能・非機能要件ではないところで決まります。
例えば、以下のような軸で判断されることがよくありますね。

 

  • 質問に対するレスポンススピード・回答の丁寧さ
  • 同業種の開発・導入事例の多さ
  • 資本関係の有無
  • 決裁までの手続きスピード(新規取引先は社内決裁に時間がかかるので既存取引先を優先するのか)
  • 最後はRFP責任者が独断で決定

 

その②:社内の決裁フローまで詳細にスケジューリングすること

「発注先が決まったら次は何をやったらいいですか?これって予算取ってるから、改めて決裁必要ないですか?」

上記は発注担当者から上司への質問です。ほぼ発注先が決まってきた段階での会話になります。
ここから改めて決裁資料を作ったり契約書の準備を始めたりします。結果、スケジュールは想定より2週間ほど遅れてしまいそうです。

頻繁にRFPを出している企業であればある程度ルーティン化されていると思いますが、社内規定でRFPの決裁フローを明確にしている企業は少ないと思います。担当者ですらどう進めていけばよいか、実際に必要なタイミングで混乱しているケースが見受けられます。

社内で多くの人が決裁に関わる場合、どういった決裁フローで誰がいつ決定するのか、出来るだけ詳細にスケジューリングしておく必要があります。

 

その③:スケジュールや予算について調整できる幅を持つこと

「既に会社の計画上○月にリリース決まってるんだから、そのスケジュールで間に合うようにベンダーに調整してもらってよ。」

上記は上司から発注担当者へのコメントです。
経営計画上のスケジュールからRFPに納期を明示していましたが、経営計画策定時にRFPの要件は明確に決まっておらず、取り急ぎスケジュールと予算だけがFIXしていた状況でした。結果、どのベンダーからの回答もスケジュール的に厳しいというものでした。

その②のとおり、出来るだけ詳細にスケジューリングや予算を決めておくことが必要です。ただ同時に、スケジュールや予算についての幅を持つこと、そして経営層や幹部とコンセンサスを取っておくことが良いです。

 

その④:発注者側もスケジュールをコミットすること

「発注はしたいのですが、まだ社内の決裁が終わっていないのでちょっと待っていてください。」

上記は、発注者からベンダーに対してのコメントになります。そして予定より1か月以上遅れが出ている状況です。

ベンダーは要件定義でも開発でもエンジニアをアサインし時間を押さえる必要があります。
急に依頼が来て明日から対応できるわけもありません。スケジュール変更が発生するとベンダーはコストだけが発生します。

リスクヘッジとして余計にコスト上積みする必要があり、発注者側にとっても結果的に不利益となります。
スケジュールが常に遅れる発注者に対して、ベンダーはネガティブになり、継続的な関係構築も難しくなります(嫌われます)。

その②、その③についても対応し、発注者側もベンダーに対して提示通りのスケジュールをコミットできる十分な準備と確認を行いましょう。

その⑤:担当者が要求事項を正しく理解し整理すること

「担当なんですけど、現場の細かいことわかっていないんですよね・・・。」

上記は発注担当者がベンダーからの質問に対しての回答になります。
現場が直接発注担当になることは少なく、多くの場合、情報システム部などIT系の部署が間に入ることがあります。

RFPの中での要求事項が明確で粒度も詳細であれば、ベンダーはやるべきことが明確になります。しかしながら、十分な時間を取らず簡単なヒアリングと現場からの要望をメールで受ける程度で要求事項を取りまとめようとするケースが散見されます。ベンダーはRFPの要求事項の粗さを見抜くので、要件定義費用にリスクを想定したコストを上乗せしてきます(当然のこと)。

事後に技術的、仕様的に対応不可となったり、想定よりも開発コストが高くなったりしないよう、十分に時間をかけて要求事項をとりまとめるようにしてください。

 

その➅:ベンダー側にも短期的な利益を持たせること

「今回はほとんど儲からないかもしれないけど、今後仕事をもらう中で回収してもらっていいから。」

上記は発注担当者からベンダーへのコメントです。開発要件と開発コストがマッチしていない場合によく使われる言葉です。ベンダー側も「今回は我慢して、次の案件で回収するか」と我慢しますが、本当に次があるかはわかりません。

多くの場合、発注担当者の依頼時の詰めの甘さで発生します。こういった搾取する側される側の関係性では、絶対にうまくいきません。ベンダー側は厳しい中でも利益が出るよう、さらに無理をします。ベンダー側に適性コストを支払い、案件単位で適切な利益確保してもらう関係性を取ることが、中長期的なプロジェクトの成功につながると思います。

発注者側には、ベンダーの仕入れコストをどれだけ値切らせたかで担当者の評価が決まる会社もあります。(問題外)

 

その⑦:お断りの場合のフィードバックは出来るだけ正直に細かく行うこと

「総合的に判断した結果、他社のサービスを利用することになりました。この度はお付き合いいただきありがとうございました。」

上記は、発注担当者からベンダーへのRFPの結果に関するメールの一文です。
多くの場合、ベンダーは無償でRFPの提案書を用意し、QAの対応を行います。受注しなければ、ただのコストとなります。

お断りすること自体は致し方ないことですが、少しでも次に生かしていただけるよう、適切にフィードバックすることがマナーです。不誠実な対応をしてしまうと悪評が経ち、次また同様の機会があった際、ベンダー側から嫌煙されてしまいます。

発注者側は、お付き合いいただいた御礼に、適切に他社を選定した理由、お断りするに至った理由など、ベンダーの次につながるようなフィードバックを意識する必要があります。

 

その⑧:出来ないことやリスクを正しく明示すること

「出来ます。対応可否は全て○になります。」

上記はベンダーから発注担当者への機能要件に対する対応可否のコメントになります。
ベンダーはRFPに参加している以上、営業は受注したい一心で積極的に出来ると言います。

発注担当者は単に対応可否を確認するだけではなく、本当に出来るのか、懸念点はないのか、ヒアリングを丁寧に行う必要があります。
またベンダーも、発注者の信頼を得る意味でも、懸念点やリスクがあれば積極的に共有する必要があります。

ただセールスしたいだけではなく、発注者のプロジェクトの成功を願って、時にはネガティブなことも言ってくれるベンダーのほうが信用ができると思います。

 

その⑨:最終的に断る勇気を持つこと

「要求厳しくてコスト的にも厳しいけど、今から断ることも難しい・・・。」

ベンダー側担当者のコメントです。
ついつい忘れてしまいそうになりますが、ベンダーにはRFPから降りる権利があります。

RFP提案後、メール等でQA対応を行うことがよくあります。その際、質問と同時に、新たな要件が対応可能か追加されることがあります。その要件が技術的に、利益的に対応が厳しい場合があります。しかし、検討が進んでいると難しいかなと思っても断りにくくなります。心情的には理解できますが、断る権利はあります。逆にタイミングが遅れると、発注者も話を進めていきますので、さらに断りにくくなります。

ビジネス的に成立しないと思えば断るということを、ベンダー側社内でのコンセンサスとして事前に形成しておくことが必要です。

 

その⑩:代理店は担ぐ製品の理解を深めること

「発注担当者様より質問が来たので、答えてもらえますか。出来れば本日中に。」

代理店担当者からベンダーに送ったメールの一文になります。
代理店が他社の製品を担いでRFPに参加する場合、必ずしも理解していない製品を提案するケースがあります。

代理店に製品知識がないため、発注者側と代理店では十分な会話ができず、メッセンジャーの役割になってしまいます。その場合、発注者の質問に対する認識に齟齬が出やすく、後々問題になりやすいです。また製品のメーカー側からすると、発注者側の製品に対する温度感や認識度合いもわかりません。

代理店が窓口対応を行う場合、まずは徹底的に製品理解をしましょう。そうでないと邪魔でトラブルの種になるだけです。

 

その⑪:互いに敬意をもって接すること

「こちらは発注してるんだから、ベンダーにはやらせればいいんだよ。」

発注担当者の上司のコメントです。
発注者とベンダーは主従関係にはありません。プロジェクトを進めていくパートナーです。

発注者が時折RFP後に無理難題を提示し、ベンダーが全ての問題を解決する側に回ることがあります。こういった関係性は、ベンダー側が意欲的に対応することが無くなり、積極的な提案を行わなず、「とりあえず今の問題を解決して終わらせよう」となります。プロジェクト規模が増えてくると、こういった1つ1つの歪が大きな問題となって顕在化していきます。

発注担当者が困ったときにも、ベンダーが一緒に問題解決してもらえるような関係性を構築していきましょう。

 

最後に

色々書きましたが、これってRFPに限らず、ビジネスにおける取引先との関係構築のためにも必要な要素かと思いました。常にWin-Winの関係性を意識しあい対応していかないといけないですね。

以上

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吉田剛
吉田剛
取締役 主に開発のプロジェクト管理や新規事業の立ち上げを行う。 現在はXCALLY(エックスコーリー)の拡販に力入れている。

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