西山です。
Amazon Connect アドベントカレンダー 2023、最終日の記事です!
ギークフィードとクラスメソッド、スカイアーチHRソリューションズのメンバーによるAmazon Connect盛りだくさんのカレンダーです。
ぜひ他の記事もチェックしてみてください。
最終日は技術系の記事ではなく、コールセンター(コンタクトセンター、以下コールセンターで統一)業界の動向についてコールセンター白書2023をベースに紹介しつつ、その中の課題についてAWSを活用してどうアプローチできるかを私の視点で書いた記事となっております。
2022年の記事もありますのでそちらも興味があればご覧ください。
目次
コールセンター白書とは
コールセンター白書はリックテレコム社が毎年出版している、コールセンターに関する日本国内唯一のデータブックです。コールセンター運営企業、BPO企業等に実施したアンケートなどから調査したデータをまとめ、業界動向がまとめられています。
超ニッチな本ですが、グラフが多く、用語解説もページ内にあるので業界に馴染みが無い方でもサクサク読めると思います。
2023年は以下の章立てとなっています。
- 国内コールセンターのマネジメント課題
- 国内コールセンターの実態
- コールセンター利用者調査
- コールセンター/CRMアウトソーシング市場検証
- 全国自治体のコールセンター誘致・進出状況調査
特に1章、2章の内容が当年の調査に基づく業界動向をメインに書いているため、そちらの内容をもとに以下は書いていきます。
3章以降は本記事では扱いません。また、グラフや詳細な数値データについても公開はせずに大まかな数値のみを記載していきます。
国内コールセンターの実態と課題
コロナ後の状況
SV・リーダー、運営者の意識
コールセンターのクラウド化、マルチサイト化
ITソリューションの導入状況
課題に対してAWSでどのようにアプローチできるか
変化に強いセンター作り、BCP対策、統合プラットフォーム化
2023年を Amazon Connect のアップデートで振り返る – Amazon Connect アドベントカレンダー 2023 –
高可用性のあるコンタクトセンターをAmazon Connectで構築する
その他にもDXへ向けたデータ統合基盤として俊敏性、可用性を併せ持つAWSを選択し成功している企業は、すでに世界中に多く存在しています。
電話以外のチャネル拡大
- チャット
- in-app(WebRTC)
- 双方向SMS
顧客の自己解決比率向上(セルフサービス化)
顧客の自己解決比率を向上させるためにまず第一に必要なことはコールリーズン(問い合わせ理由)を分析することです。
どういった問い合わせが多いのかを分析し、ニーズが高く自動化しやすいものから着手していくことで、効率よくセンター全体の生産性と顧客満足度を向上させることができます。
しかしコールリーズンを分析するためにすべての通話を人の手で確認することは困難です。
Amazon Connect Contact Lensの通話の自動分類機能を利用すると、事前定義した単語やフレーズをもとに通話へラベル付けをすることができます。
また、生成系AIを利用すれば、事前に単語やフレーズを登録しなくても、指定したカテゴリーのどれに通話が分類されるかを通話の文字起こし結果から判定することも可能です。
いずれの方法を取るにしても、コールセンター運営者が事前にどういったカテゴリー、問い合わせ内容があるかを知っておく必要があります。
問い合わせが多く自動化しやすいものが特定できれば、そこから先は実装です。
例えば「顧客のアカウント情報の変更」を自動化する場合、Amazon Connectとアカウント情報を持つアプリケーションとの連携を行います。
通話とチャットでは音声かテキストかというインターフェースの違いはあれど、システム間連携の仕組みは変わらないため再利用することができます。
Amazon Connectはシステム間の連携にLambdaを利用するため、スケーラブルな連携の仕組みを短期間で開発することができます。シンプルな連携であれば、1週間以内にプロトタイプを作ることができるのではないでしょうか。
最終的に顧客が自分自身で問題を解決することが目的であるため、インタラクティブな音声のやりとり(ボイスボットなど)にこだわらず、アカウントの情報変更リンクをSMSで送信するといった方式でも全く問題ないと思います。
音声インターフェースはWebアプリなどと比較して開発コストが高いため、コスト・期間と顧客体験のトレードオフになります。
どちらを選ぶかは状況によって変わりますが、小さく始めて徐々にスケールするというAWSのベストプラクティスに従うのが良いと思います。
生成系AIの活用
2023年はChatGPTを始めとした生成系AIが世の中で広く知られるようになった年でもあります。
AIが人間かと思うほど自然な日本語で会話ができることに驚きましたが、同時にハルシネーションも起きやすいというのはご存知の方も多いと思います。
ハルシネーションを平たく言うとAIがわからないことをそれっぽく言う現象のことです。
ハルシネーションとは、人工知能(AI)が事実に基づかない情報を生成する現象のことです。まるでAIが幻覚(=ハルシネーション)を見ているかのように、もっともらしい嘘(事実とは異なる内容)を出力するため、このように呼ばれています。
OpenAIのChatGPTやGoogle Bardのような会話型AIサービスでは、ユーザーの質問に対してAIが回答しますが、どのようなデータに基づき回答されたのかが分からない場合、それが真実なのか嘘なのか、ユーザーが判断することは困難です。ハルシネーションは、会話型AIサービスの信頼性に関わる問題であり、この問題を解消するために様々な研究が進められています。
記載あるように、AIの回答が正しいかは保証されません。
また生成系AIは従来のシステムや従来のAIモデルと比較してコストがかかり、処理や準備のスピードが遅いといった課題もあります。
前章で紹介したようなアカウントの情報変更などの定型業務は生成系AIを使わずともより早くコスト効率も良いシステムを構築することができます。
ですので、安易にいろいろなことに対して生成系AIを使おうという考えは正しいとは言えません。
生成系AIが強みを持つのは新しい文章を生成する部分、特に要約などの与えられた情報から簡潔な文章を生み出すタスクを行うときです。
問い合わせの要約に生成系AIを活用することで、ハルシネーションが起きづらく安全に、かつ人間の業務負担を大幅に減らすことができる上、品質の標準化を図ることができます。
Amazon Connect Contact Lensには会話の要約機能があるほか、Amazon Bedrockを利用することで複数の企業のモデル、自分でトレーニングしたモデルを利用することができます。
AIを始めとして新しい技術を使うことは重要ですが、それぞれには適材適所があることを理解することが重要になります。
下記は参考にしたコンタクトセンターで生成系AIをどう活用することができるかについてのAWSのブログです。
How contact center leaders can evaluate using generative AI for customer experience
正しいKPIの取得
SV・リーダー、運営者の意識の章でも記載しましたが、日本のコールセンターではKPIとして応答率やサービスレベル(◯秒、◯分以内に応答した割合)を一番に重視する傾向がありますが、本質的には「顧客が問い合わせした内容が解決した割合」、「問い合わせの中で良い顧客体験を味わうことができた割合」といった数値をKPIとすることがよりコールセンターの設立意義に即しています。
KPIとして利用するためには元となるデータを取得し可視化するする必要があります。
「顧客が問い合わせした内容が解決した割合」を例にすると、通話やチャットの各問い合わせの際に、
- オペレーターが直接顧客に問題が解決したか尋ねる
- 通話、チャット終了後に解決したかをIVRや自動チャットで聞く仕組みをつける
といったデータの取り方が考えられます。そしてそのデータを各通話、チャットのデータに紐付けて保存する必要があります。
Amazon Connectでは問い合わせ属性を設定することで各問い合わせ(通話、チャットなど)に独自に定義したデータをもたせることができますし、AWS上の他のデータベースサービスを活用することもできます。そしてそれらのデータをAWSのアナリティクス系サービスを利用することで様々なデータと合わせて可視化することができます。
また、「問い合わせの中で良い顧客体験を味わうことができた割合」はNPS(ネットプロモータースコア)を取得することで実現することができますが、こちらも同様にデータを取得し個別の問い合わせと紐づけて保存する必要があります。
このように、コールセンターや顧客、ビジネスのニーズに応じて、新しいデータを取得し通話に紐づけて保存するというカスタマイズを繰り返し行っていく必要があり、またカスタマイズは短期間で行う必要があります。
そうした際にAmazon ConnectおよびAWSはひとつの最適解といえます。
Amazon Connect自体が日々進化していること、AWSの他サービスと組み合わせていかようにもカスタマイズ、スケールすることができること、新しい変更をすぐに試しサイクルを回すことができるためです。
さいごに
コールセンター白書2023の内容と課題に対してどうAWSを活用するかという内容でした。
コールセンター白書は普段のシステムベンダーの立場からは見ることのできないコールセンターの実態やニーズを知ることができるため、顧客フロントに立つエンジニアやプリセールスのエンジニアにおすすめの本です。
具体的な数値データをブログ内では出せなかったので、内容に興味を持った方はぜひコールセンター白書を実際に読んでみてください(ギークフィードのオフィスにあるので定期開催しているもくもく勉強会のときにも読めますよ!)
最後に、ブログ記事のサムネイルはDALL·E 3で生成した、コールセンターオペレーターの前で力強く演説するシステムエンジニアの画像(少年漫画風)です。
生成系AIはブログのサムネイル作成には最高ですね。
こんなイラストもできました。巻頭カラーにありそう。
それでは2024年もよろしくお願いします!
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